もくじ
文部科学省の調査によると、理系学生の進学率は以下の通り。
- 理学:40.3%
- 工学:35.6%
文系を含めた全体の進学率は11.3%ですので、理系の大学院への進学率は特に高いといえます。
参考元:文部科学省「令和2年度学校基本調査(確定値)の公表について」
理系院卒が多いということは、それだけ「就活のライバルが多い」ということ。
就職活動においては、学歴だけではなく人柄や熱意なども含めて総合的に評価されるため、 “なんとなく”面接を受けても内定は勝ち取れません。
多くのライバルたちから頭一つ抜き出て評価され内定を勝ち取るには、“勝てる戦略作り”が大切です。
そこでこの記事では、理系院卒の就職事情や、就活を成功させるポイントを紹介します。
ぜひチェックしてみてください。
- 理系院卒を多く採用しているのはどんな企業?
- 理系院卒が就職しやすい職種とは?
- 理系院卒が就職でトクすることは?
- 理系院卒が就職を成功させるポイントは?
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やっぱり多い?理系院卒を積極採用している企業
理系の院卒者を積極的に採用している企業を知っておけば、就活を進める手がかりにもなります。
ここでは、『就職四季報2020年版』のデータを基にして、理系院卒を多く採用している会社を見ていきましょう。
理系院卒を最も多く採用している企業はホンダ
理系院卒の採用数、第1位は自動車メーカーのホンダ!
院卒採用数363人のうち、文系はわずか7人で、なんと356人(98.1%)が理系でした。
ホンダとしては製品開発に携わる理系の技術者を多く採用したい
理系院卒としてはホンダのような自由な環境で研究したい
といったことが、理系院卒の大量採用につながっているのでしょう。
第2位は空調機器メーカーのダイキンで、院卒採用数239人のうち、235人(98.3%)が理系の学生でした。
ダイキンはフッ素化学事業も展開しているため、機械系の学生だけでなく、化学系の院卒者も多く募集していることが理由といえるでしょう。
電子機器や重化学工業系のメーカーが理系院卒を多く採用
その他、理系院卒の採用数が多い企業は以下の通り。
- 京セラ
- 新日鐵住金
- 野村総合研究所
- JFEスチール
- オリンパス
電子機器メーカーや重化学工業系の企業が多いことがわかりますよね。
これらの企業は、大学院レベルの専門的な知識をもった開発者や研究者を多く募集しているといえるでしょう。
参考文献:就職四季報2020年版
理系院卒が就職しやすい職種とは
理系院卒は、研究職や開発職など理系のイメージが強い職種の他、意外と知られていませんが論理的思考が求められる文系職も実は狙いやすいのです。
ここでは、具体的にどんな仕事に就きやすいのか解説していきます。
理系院卒が就職しやすい「理系職」
理系院卒が就職しやすい「理系職」には、以下のようなものがあります。
- 研究職
- 開発職(研究開発職)
- 生産技術職
- 組み込みエンジニア職
理系職の中でも、大学院生が圧倒的に有利とされるのは大手メーカーの研究職です。
- 修士以上の学生だけを採用している企業もある
- 大学院の推薦で就職が決まることも多い
といった理由から、大学院に進学する人も多いでしょう。
とはいえ、いくら理系院卒のほうが研究職に就く際に有利であるとはいえ、決して簡単なわけではありません。
次のようなポイントを把握して、対策を練っておくのが重要です。
- 研究職の採用枠は少なく難関であること
- 研究職と開発職は違うということ
さらに、ライバルも同じ理系院卒であることが多いため、自分の研究成果をしっかりとアピールしなければ内定はもらえません。
加えて、研究職と開発職の違いを知っておくことも大切です。
似たような名前ですが、以下のようにそれぞれの仕事内容は異なります。
- 研究職:基礎的な研究をする仕事
- 開発職:製品化のための研究開発をする仕事
基礎研究だけではなく、製品化やマーケティングにまで携わりたい人は、研究職より開発職のほうがおすすめです。
次の記事では、研究職と開発職の違いを詳しく解説していますので、参考にしてください。
その他、研究職や開発職と似た仕事として、
- 生産技術職:生産ラインの効率化や人員配置を考える仕事
- 組み込みエンジニア職:機器に組み込まれるシステムを開発する仕事
といった職種もあります。
詳しい仕事内容は下記の記事で紹介していますので、気になる人はチェックしてみてください。
就職してから「こんなはずじゃなかった……」と思わないように、各仕事の違いをきちんと知っておきましょう。
理系院卒が就職しやすい「文系職」
理系の院卒が文系職と聞くと、意外に感じる方もいるかもしれません。
ですが、実は理系院卒でも就職しやすい文系職がいくつか存在しています。
- コンサルティングファーム
- 金融
- 総合商社
などは、理系でも狙いやすい文系職といえるでしょう。
その理由は、これらの職種では理系に以下のようなことが期待されているからです。
- 理系的な論理的思考力や問題解決能力
- 計算力や数字を用いた分析力
- 研究に打ち込んだ経験に基づく激務への対応力
さらに外資系企業であれば、理系と文系の区別がない場合も多いので就職しやすいといえるでしょう。
幅広い職種や業界にチャレンジできるのは、理系院卒の大きなメリットですね!
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
理系、文系の区別はそこまで重要ではない
そもそも「理系」や「文系」という区切りは日本独特のもので、世界ではあまりこの二分はしていないことをご存知でしょうか。
理系といっても、基礎研究や応用研究・数学・物理・生物・化学、ほかにも様々な分類がありますし、工業系も近接分野です。
それらを一括りにして「理系」と呼ぶことはできません。
文系にしてもそれは同じ。
また、働き始めてから「理系だから」「文系だから」という区別もナンセンスです。
- 理系で話が苦手だから、会議で発表したくない
- 文系で計算が苦手だから、数値的な根拠を入れずに営業する
そのようなことは、あまりビジネス現場では認められません。
仕事においては、理系か文系かではなく「何ができるか」を見られます。
「〇系だからこれができない」ではなく、今自分ができること、得意なことをどのように活かせるかが大切です。
理系院卒が就活でトクすること
理系の学部卒よりも院卒のほうが就職でトクすることはありえるのでしょうか。
就職する業界や企業によって異なるため一概には言えませんが、次のような点でトクすることもあるでしょう。
初任給が高い
厚生労働省の調査によると、学歴別の初任給は以下の通り。
- 大学院修士課程修了:23万8,900円
- 大学卒:21万200円
- 高専・短大卒:18万3,900円
- 高校卒:16万7,400円
学歴による給料の差は会社によって異なりますが、最終学歴が高いほど給料もアップする傾向にあります。
学部卒と院卒で比較すると、およそ3万円ほど院卒のほうが高いという結果になっていました。
1年目の年収で考えると、賞与を抜きに考えても約36万円の差が出るので、給料の面では院卒で就職するほうがトクといえるかもしれません。
ただし大学院卒は就職年齢が大学卒よりも高いため、昇給分と比べると同じ年齢ではそれほど大きくトクというわけではありません。
参考元:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給」
“やりたい仕事”に就ける可能性が高い
自分が希望する仕事に就きやすいことも、院卒がトクするポイントといえます。
院卒は専門スキルを身に付けているため、同じような志望度であれば、企業側は学部生よりも院卒を採用しようと考えるからです。
- やりたい仕事に関する専門スキルを身に付けておく
- それを面接でしっかりアピールする
といったことが重要です。
学部生も本気で面接に挑んできますので、十分に準備しておかないと内定は勝ち取れません。
キャリアアップしやすい
就職した会社の中でキャリアアップしやすいことも、院卒がトクするポイントです。
専門的な知識やスキルを持っているため、若いうちに
- 大きな仕事を任される
- リーダーや管理職的なポジションを任される
というケースもあるでしょう。
その分プレッシャーや責任は増えますが、「バリバリ働きたい!」という人にとっては嬉しいポイントですね。
理系院卒が“勝てる”就活をするには
それぞれ順番に見ていきましょう。
学部卒との違いを知っておく
学部卒と院卒の大きな違いは、専門性にあります。
学部卒は就職に際してポテンシャルを重視されます。
これから長く一緒に働いてくれそうか、成長性はありそうか、といったポイントを見られます。
一方で院卒は、それまで学んできたことや実際にどれだけの専門性を発揮できるかの知識とスキルが重視されます。
ポテンシャルのアピールも必要ですが、学部卒がアピールするような「若さ」「フレッシュさ」よりも、これまでの研究で積み上げてきたものをアピールするほうが良いでしょう。
学校推薦や教授推薦などの「推薦枠」を利用する
理系院卒が有利に就活を進める1つ目の方法は、「推薦枠」を利用することです。
推薦枠とは、企業が大学の専攻分野ごとに設けている採用枠のこと。
- そもそも企業と大学の信頼関係がある
- 教授が推薦状を書いてくれる
といった後押しがあるため、推薦枠を利用すれば、高確率で内定を勝ち取れるでしょう。
ただし、内定が出た後に断ることは基本的にNGです!
企業と大学の関係性を壊すことにつながるので、本当に就職したい会社に絞って推薦を受けましょう。
推薦枠についての詳しい説明は、以下の記事を参考にしてください。
研究内容を分かりやすく伝えられるようにする
面接では、大学院での研究内容を分かりやすく伝えることも重要です。
理系の研究は専門的であるため、どうしても専門用語などを使った難しい説明になりがち……。
しかし、すべての面接官が理系の専門知識に詳しいわけではないため、場合によっては専門用語がうまく伝わらないことも多いのです。
誰にでも分かりやすく伝えられるよう、しっかり練習しておきましょう。
これはなにも、面接の場のみに限ったことではありません。
専門的な研究を仕事にしたとしても、専門家でない人と会話する機会は必ずあります。
研究内容を伝えると同時に、
- 長期間の研究を成し遂げる忍耐力
- 相手によって言葉を変えるコミュニケーション能力
などもアピールするのが内定を勝ち取るポイントです。
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
採用試験では専門性に+αで社会人としてのスキルが求められる
院卒の場合、学部卒よりも長く研究していることが大きなアドバンテージといえます。
学部卒が社会人経験を積んでいる間に研究を続けているので、学部卒と比較して専門性は「あって当然」と見られています。
そのうえで、現在はコミュニケーション能力がある専門家が求められる傾向にあります。
「理系だから」「文系だから」という区別は、ビジネスにおいては無意味です。
ですが、それに縛られている社会人が大勢いるのもまた事実。
専門性は高いものの「私は理系で話すのは苦手だから」とコミュニケーションを取ろうとしない研究者。
一方で、専門性が高くなおかつ積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれる研究者。
どちらと仕事をしたいと思われるでしょうか。
理系院卒は「専門性×別のスキル」でアピールすることも考えてみてください。
“理系院卒だから就活は大丈夫”は思わぬ悲劇をよぶことも……
今回は、理系院卒の就職事情や、就活を成功させるためのポイントを紹介しました。
理系院卒は、学部生と比べて専門的なスキルがあるという点では、就活は有利といえます。
一方で、「専門性の高さ=柔軟性の低さ」と捉えられると、面接で落とされる可能性もあるため注意が必要です。
理系院卒だから就活は大丈夫とたかをくくっていると、思わぬ落とし穴に見舞われるかもしれません。
たとえ推薦してもらえるとしても、自分のスキルをアピールできるよう面接前にしっかりと準備しましょう。
まとめ
理系院卒の就活では、まずは学部卒との違いを意識することが重要です。
そのうえで、しっかりと専門性があることをアピールしつつ、加えて専門性以外にも何かアピールポイントをもっておくと成功しやすくなります。
おすすめは、コミュニケーション能力のアピールです。
ですが、今まで研究を頑張ってきたのに「次は就活を!」と言われても、なかなか切り替えられないですよね。
そんなときは、第三者に相談してみることもご検討ください。
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