既卒のための業界解説|証券・保険業界のシステム開発に求められるあんなコトこんなコト

私は新卒後、証券系シンクタンクで7年間SEとしてシステム開発に従事し、その内3年間は親会社(ユーザ企業側)への出向となり、ユーザ側の立場でシステム要件定義を行っていました。その後、転職先の保険会社では6年間協力会社のパフォーマンス管理やプロジェクトマネジメント支援を中心とした業務を実施しており、これらの経験の中で多くの案件の成功や失敗を目の当たりにしてきました。

現在、巷では成功のためのベストプラクティスやフレームワークなどが学術的に研究され、IT業界標準として体系化されているものも見かけますが、それを全て行うのは現実的には無理があります。実際そのようなプロジェクトは未だ見たことはありません。だからこそ今回は特に成功のファクターとなりえる項目にフォーカスしていきます。

業務知識は必須

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システムユーザが、IT部門に作って欲しいシステムの要件を記載する文書を「要件定義書」といいます。これを作成する工程である「要件定義」の実施においては、証券であれ保険であれ、SEは業務知識の習得が必須となります。なぜならばユーザが言葉で語り、要件定義書に書く部分というのは「彼らが想像している完成形」のせいぜい多くとも2割程度だからです。

具体的に説明しますと「○○できる機能が欲しい」と要件定義書に書いたからといって、○○という専門用語を調べその機能を実装するだけでは、○○の前にある業務、後にある業務、参照する業務、類似した業務に対する変更対応が全く出来ておらず、すぐに本番稼動後にシステム障害を発生させたり、ユーザ検証テスト時に幻滅されてしまいます。

○○という機能は△△という業務の1処理であり、一連の業務プロセスの中の◇◇~■■間で行われる・・・といった所までを理解した上で、必要な対応事項を確認していく必要があります。

ユーザが文書化した少ない情報量を基に、IT部門の人間が気がかりな影響業務について具体的に問いかけ、答えを引き出し記録していくことが肝要です。システム開発は一般的に後工程になるほど手戻りによる工数が大きく発生するため、最初の工程である要件定義でいかにユーザのニーズとブレの無い要件定義書を作成できるかが大きく成功の鍵を握っています。このためにユーザの業務を知ることは大変重要なことです。

ユーザ業務学習の近道としては、証券会社ならば「証券外務員試験」、保険会社ならば「生保講座」がお勧めです。ただ漫然と学習するのではなく、何かチェックポイント(合格や修了など)がある方が人は努力できるかと思いますので・・・

協力会社を上手に使う

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金融機関のIT部門というのは当然ながらシステム会社ではないため、その社員数も保有するスキルにも限りがあります。そんな中で複雑なシステムの大規模改修を年に何度も行わねばならないミッションを負っています。このため金融機関では常に協力会社リソースを大量に使い、その依存度がかなり高いのが特徴的です。

彼らはプロのためプログラミングや設計、テストスキルにおいては社員を上回る技術を持っています。しかしながら基本的には「作業指示書に書かれた作業をこなす」人々のため、余分な工数になる「指示されていない作業」は原則行ってくれません。また、責任分担が曖昧な作業も行いません。

従って、万が一システム障害の元となる「検討漏れ」や「作り間違い」がその指示されていない領域にある場合には、協力会社はまずそれを見つけることができないでしょう。ただそれが契約の内容なので、彼らを責めるのは筋違いとなります。

IT社員が上手に協力会社を使うためには、例えば下記のような対応が必要です。

  • 作業指示書を説明する際に、内容だけでなくその作業の業務的な趣旨(ここで業務知識があるとよいです)も併せて説明し、極力自分に近い観点を相手に持たせる。
  • 作業指示書は上席、関係部署など、出来るだけ多くの社員に確認してもらい漏れがないようにする。
  • 各作業明細において、協力会社と社員の役割をしっかり明記しておく。
  • 協力会社のリーダーとは定例会以外にも密にコミュニケーションを取り、相手が気がかりに感じていることをタイムリーに汲み上げられるようにする。

プロジェクトマネジメント(進捗管理)能力

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金融機関のシステム開発で大規模なものは、新商品対応や制度対応などの「実施延期を許されない」案件が多いです。このため最悪のケースでは、制度対応に間に合わなかったせいで金融庁から業務停止命令を受け、会社全体の風評を落とすような結果になってしまうことがあります。

そしてこういった大規模開発の大半を協力会社が担うため、彼らの実施状況を管理する能力は大変重要となります。例えば定例会の中で、ずっと進捗が遅れているタスクがあるのに「後の工程で取り返せます」と自身満々に言われたり「今週も問題なく進んでいます」の一言で報告を終えられたりすることは、社員にとっては大変リスクのある状況です。

これまで見てきたケースですと、こういった協力会社の「ポジティブ報告」がプロジェクトの終盤まで続き、最後の最後で「実は・・・」と切り出され、そこで初めて進捗に致命的な事象が裏で発生していたことを知るということは少なからずありました。

協力会社は自身の評判のため、ギリギリまで問題を社員の目に留まる前にもみ消そうとする傾向があり、それを見抜けないと結果的には社員のミスとされてしまいます。進捗管理を有効にさせるためには下記のことが必要です。金融機関における一流のマネージャーは、皆基本的には疑り深いです。

  • 各タスクについて数字で進捗率を設ける。報告時に先週から何%進んだのかを根拠を交えながら報告させる。
  • 遅れを取り戻せると協力会社が主張する場合には「いつ追いつくのか。具体的に何をして追いつかせるのか」を納得がいくまで説明させ、誤りがあれば正す。
  • プロジェクトの重要部分となるタスクについては、実際に作業フォルダ内の中間成果物を途中で確認するなど、自ら作業現場をまめに監視する。

厳しい変更管理

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私が金融機関のシステム開発を経験してきて一番理不尽に感じたのがこの「変更管理」です。開発の一般論では、ユーザがシステム要件に口を出せるのは原則「概要設計」工程までで、それ以降は決められた設計書に基づき構築がなされます。家を建てる際に、設計図が完成したら内見までは発注者が口出しをしないのと同じです。

しかしながら多くの金融機関ではユーザはこのルールを守りません。「詳細設計」工程や、「開発」「テスト」工程になっても平気で機能追加や仕様修正の依頼を出してきます。実は、主なシステム障害の原因の1つがこの「遅すぎる変更依頼」への無理な対応となっています。

設計を終えた後にある部分を修正すると、その影響がどこに及ぶのかを検証するのに大変時間を要し、その対応を行っている最中に更に次の依頼が来ると、もはや結果がどうなるかが誰も保証できない状態になってしまうからです。そしてその結果システム障害が発生すれば、ユーザは「ITがミスをした」と主張するのです。

このような理不尽がまかり通ってしまうのは、ユーザ部門がシステム案件の発注者であるため立場が強いという事情があります。役員同士でも、営業・マーケティング部門とIT部門の本部長同士では、ほぼ例外なく前者の方が立場は上です。また、大金を投じ滅多にないチャンスで開発してもらえるユーザ部門の立場としては、多少の我侭くらい聞いてもらえないと困るといった認識もあります。こういった状況の中ではいくら正論を説いても簡単にはこの構造は変わりません。

この件については特効策が余りないのですが、強いて言えば、概要設計後の変更要求は変更管理委員会でユーザ部門、IT部門の部長クラスの承認が必要となるというルールを作り、更にその変更が他の機能に多大な影響を及ぼすことが見込まれるならば、容赦なく追加対応工数とスケジュール延期を見積ってユーザに承認を求めることかと思います。理不尽な要求に対し、泣き寝入りだけはしてはなりません。

最後のアドバイスは「人を疑え!」

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証券会社や保険会社のシステム開発プロジェクトは、銀行並に厳しい品質とスケジュール管理が求められます。そして、その大部分を協力会社に委ねなければならず、一方ではいつまでも変更要求を出してくるユーザがいます。

このような環境で成功を収めることは本当に難しいと思いますが、敢えて一言でその成功ファクターを言い表すのならば「常に人を疑え」ということです。ここまで読んできて、元も子もないように思われますが、言い方を変えれば「自分が心の中で相手に期待していることは相手には通じていない」と考えることです。だからこそ書面に明記したり、詳細な説明を求めさせたり、数字で相手に無謀を分からせたりすることが必要なのです。

私生活でこんな性格ですと人から好かれないかと思いますが、開発プロジェクトの成功のためには自分の意思をいかに相手に「間違いなく」伝えるか、あるいは相手から聞き出すかがとても重要なのです。

この他、今後注目しておいて欲しいこれから伸びる業界解説に関しては下記をチェックしてみてください。
既卒のための業界研究|これから伸びる業界はどこ?vol.1
既卒のための業界研究|これから伸びる業界はどこ?vol.2
既卒のための業界研究|これから伸びる業界はどこ?vol.3
既卒のための業界研究|これから伸びる業界はどこ?vol.4

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